ぐう、と腹が鳴った。
静まり返った部屋にその音だけが虚しく響く。
強烈な空腹感に突き動かされるようにして、私は重い腰を上げた。
期待を込めて冷蔵庫の扉を開けてみる。
しかし、目に飛び込んできたのは冷え切った空気と、隅っこに転がった使い道のない
調味料の小袋だけだった。見事なまでに何もない。
運の悪い日というのは重なるものだ。こういう時に限って、食料の備蓄が底を突いている。
「……嘘だろ」
淡い希望を抱いて戸棚を漁ってみたが、守護神であるはずのインスタントラーメンも、
最後の砦のカップ麺すら見当たらない。
どうしてこんな惨めな状況になったのか。理由は明白だった。
窓の外では朝から冷たい雨が降り続き、時折激しい風が窓を叩いている。
そんな中、寒風にさらされてまで買い出しに行く気力など、今日の私には微塵もなかった
のだ。結局、日がな一日布団の中で惰眠を貪っていたツケが、この空腹となって
回ってきたわけだ。
絶望に打ちひしがれながら台所の隅に目をやると、年季の入った炊飯器がひっそりと
佇んでいた。
おそるおそる蓋を開けてみる。そこには、いつのものか分からないカピカピになりかけた
冷ご飯が、わずかばかり残っていた。
今の私にとって、それは宝石よりも輝いて見えた。ただこれがあるだけでも、
天の助けに思える。贅沢なんて言っていられない。今夜はこれだけで、十分に戦える。
私は引き出しの奥からお茶漬けの素を引っ張り出し、冷ご飯の上に豪快にぶっかけた。
仕上げに、冷蔵庫のドアポケットで眠っていたチューブのワサビをたっぷりと添える。
「完璧じゃあああ!」
心の中で快哉を叫びながら、私はポットのスイッチを入れた。
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