今日は少し贅沢をして、卵かけごはんを食べることにした。
贅沢といっても、おかずのない貧乏四畳半の食卓においては、卵ひとつあるだけで立派な
ご馳走に見えてしまうのだから現金なものだ。
実を言うと、私は卵かけごはんが少し苦手だ。
あの白身特有のヌルヌルとした食感がどうしても受け付けない。
黄身だけを乗せたものなら美味しくいただけるのだから、私の貧乏舌もなかなか贅沢な
注文をつけるものだと思う。 いっそ白身を外してしまえばいい。
しかし、今の私にそんな余裕はなかった。
昨今の物価高で、卵の価格も軒並み上昇している。白身にかかっているコストだって
馬鹿にはできない。 貧乏ゆえに、食べられる部分を処分するなんて選択肢は、
到底ありえなかった。
なら、残った白身を焼けばいいじゃないか、という声が聞こえてきそうだ。
だが、それには手間という高い壁が立ちはだかる。
せっかくの卵かけごはんを楽しもうという瞬間に、再び台所に立って火を使うことが、
どれほど苦痛なことか。
炊き立ての温かいごはんの上に、ぷっくりとした黄身だけを乗せる。
それはもう、神々しいまでの黄金の輝きを放つ「黄身様」だ。
その黄身様を放置して、フライパンに油を引いて白身を焼く。
そんなことをしている間に、主役であるはずのごはんはどんどん冷めていってしまう。
それは、黄身様に対しても、お米に対しても、あまりに申し訳が立たないではないか。
結局、私は葛藤の末に、泣く泣く白身も一緒に放り込むことにした。
器の中で混ざり合う白と黄。これが今の私の限界であり、正解なのだ。
一気に口へかき込みながら、ヌルッとした食感の向こう側にある濃厚なコクを味わう。
これが、貧乏四畳半における切実な卵かけごはん事情であった。
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