貧乏四畳半風雑煮


 正月といえば雑煮だが、ここ貧乏四畳半の雑煮は、裕福の人から見れば

「え、これだけ?」と二度見されるほどにストイックだ。

各地方には味噌を使っているイメージが強いだろうが、こと雑煮に関しては貧乏四畳半では

澄み切った「すまし汁」一択。 そこに、四角い餅と「もち菜(正月菜)」という青菜を

放り込む。基本はこれだけ。実にかっこいい。だが最近の高値口頭で手が出ないので、

安価な白菜で凌ぐことにする。って毎年そうなんだが、毎回白菜なので白菜が定番の

仕様になってしまった。いさぎよく白菜を定番としようではないか!

まず、餅。貧乏四畳半では角餅を「焼かずに煮る」のが伝統だ。 

なぜ焼かないのか。それは「城(餅)を焼かない(落城させない)」という物騒かつ切実な

願いが込められているからだ。焦げ目ひとつつけず、白くツルリとした餅を維持するのが

貧乏四畳半流の美学なのである。本音は焼く手間が惜しいのである。

そして、唯一の具材と言っても過言ではない「もち菜」。 小松菜によく似ているが、

もっと色が濃くて葉が柔らかい。こいつを入れるのは「名(菜)を上げる」という

ダジャレ……もとい、立身出世の願い。しかし諸事情により白菜に格上げしたのだった。

さらに 仕上げにたっぷりの花かつおを踊らせれば、貧乏四畳半の雑煮の完成だ。

「具が菜っ葉だけなんて寂しい」なんて言うなかれ。 真っ白な餅の上に、

鮮やかな白の白菜が載り、その上でかつお節がゆらゆらと揺れる。



 引き算の美学が生んだ、究極のミニマリズム。

 これこそが、これから再び戦い(入院)に赴く私にふさわしい、勝負メシではないか。

この一杯を啜って、「名(菜)を上げる」どころか「病を上げる(治す)」勢いで、

新しい年を迎えてやろうと思う。



コメント