年明けうどん

カレンダーが新しい一枚に変わっても、私の財布の中に春が訪れる気配はない。

窓の外を吹き抜ける北風と同じくらい、懐事情は例年通り、いや例年以上に

冷え切っている。

それでも、世間は正月だ。街を歩けば浮かれた空気が漂い、

スーパーの棚には目もくらむような豪華なおせち料理が並んでいる。

そんな光景を横目に、私は特売の冷凍うどんをカゴに入れた。

せめて、今日くらいは。 自分への言い訳を胸の中で反芻しながら、私は「贅沢」の準備を

始める。

主役は、普段なら素通りする揚げ物コーナーで手に入れた市販の天ぷらだ。

時間が経って少し硬くなった、あのカリカリとした衣がたまらない。

それを熱々のつゆが張られた丼の上に、仰々しく鎮座させる。

さらに仕上げとして、トースターで膨らませた餅を二つ、黄金色の天ぷらの脇に添えた。

出来上がったのは、名付けて「超豪華・餅入り天ぷらうどん」。

湯気と共に立ち上がる出汁の香りが、狭いキッチンを満たしていく。




箸を入れると、カリカリだった天ぷらの衣がつゆを吸い込み、じゅわっと解けていく。

その脂が溶け出したつゆを、香ばしく焼けた餅に絡めて口に運ぶ。

一口食べれば、胃袋の底からじんわりと熱が広がった。

実のところ、正月だからといって贅沢をしていい理由なんてどこにもない。

明日になればまた、厳しい現実と向き合う日々が始まるのだから。

けれど、この一杯のうどんをすすっている間だけは、吹き荒れる寒風を忘れていられる。

質素な贅沢。そんな矛盾した言葉が、今の私にはちょうどいい。

どんぶりの底が見える頃には、心なしか体も軽くなっていた。

今年も相変わらずのスタートだが、この温もりがあれば、なんとかやっていけそうな

気がする。

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