四畳半の部屋に、炊飯器の蒸気が白く立ち上る。 冬の結露で湿った窓を眺めながら、
私は出来上がりを待っていた。
おひとりさまの貧乏生活において、梅干しは贅沢品ではない。むしろ必需品だ。
おにぎりの具にしたり、日の丸弁当の真ん中に据えたりと、使い道はいくらでもある。
そう思って買ったはずの一パックが、冷蔵庫の隅でずっと居座っているのが
気になっていた。
独り身の世界では、市販の梅干しはあまりに量が多いのだ。
一度におにぎりを十個も二十個も握るわけではない。せいぜい三個。
弁当に至っては一日に一個使うだけだから、一向に底が見えてこない。
このままでは梅干しと一緒に、私の胃袋も停滞してしまいそうだった。
そこで、私は一つの作戦を立てた。 梅干しの炊き込みご飯。 解決策は至ってシンプルだ。
研いだ米を釜にセットし、そこへ梅干しを二、三粒、遠慮なく放り込む。
あとは炊飯スイッチを押すだけである。
しばらくすると、狭い部屋に食欲をそそる香りが漂ってきた。
炊き上がったばかりの蓋を開けると、ふっくらとした米の真ん中で、梅干しが優しく
崩れている。 しゃもじでざっくりと混ぜ合わせれば、桃色の粒が白いご飯に
溶け込んでいった。
茶碗に盛り、まずは一口。 懸念していた強い酸味は角が取れ、代わりに深い旨味が
米の芯まで染み渡っている。 元来、梅干しとご飯の相性が悪いわけがないのだ。
この素朴な贅沢を噛み締めながら、私は四畳半の静寂の中で、しばらくの間箸を
動かし続けた。
次は、この梅干しご飯に出汁をかけて、お茶漬け風にして食べてみよう。
新たなアイデアでほくそえむ貧乏四畳半である。

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