最強寒波

 一月の冷え切った日曜日の朝。 

いつもなら遠くから響いてくるはずの車の走行音や、街が目覚める活気まじりの騒音が、

今日に限っては一切聞こえてこない。

無音だ。不気味なほど、徹底した無音。

雪のせいだろうか。たとえ雪が降り積もったとしても、いつもなら始発のバスが

チェーンを巻いて、チャラチャラと頼もしい金属音を立てて通り過ぎていくはずなのに。

今日はその音さえも、深い静寂に飲み込まれている。

枕元に放り投げていたスマホで天気予報を確認すると、画面の中のキャスターが

最強寒波の到来を告げていた。各地で氷点下。マイナス。耳に残るその言葉が、

部屋の冷気をさらに数度下げたような気がした。

だが、この四畳半のボロアパートにおいて、本当に深刻なのは外気温ではない。 

私の財布の中身こそが、今まさに最強寒波の直撃を受けているのだ。

貯蓄という名の防波堤はとっくの昔に決壊し、今はただ枯渇した大地が広がっている。

吹きすさぶ値上げの嵐は容赦なく、なけなしの予算は木の葉のように翻弄されるばかり。

スーパーの棚の前で右往左往し、少しでも安い食材を探し回る毎日だが、それでも

あっという間に家計は予算オーバー。

マイナスにマイナスを重ねる、絶望の氷点下。 財布の隙間から吹き込む風は、

窓の隙間風よりもずっと冷たい。

寒い。 せめて体の中から温まりたい。

この極寒の朝、貧乏四畳半に残された唯一の希望。 棚の隅にひっそりと出番を

待っていた、一袋のインスタントラーメン。

贅沢は言わない。今の私にとって、これこそが最高のご馳走だ。 

湯気の向こうに春を夢見て、震える手で鍋に火をかける。 寒い朝は、朝ラー。

貧乏四畳半ではこれしかできないのだった。









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