鏡開き

カレンダーをふと見やって、私は小さく声を漏らした。

鏡開きの日は、とうに過ぎ去っている。

台所の片隅に鎮座する鏡餅を見つめる。

その頂上に乗ったゆずは、年末に安売りされていたものだ。

青々としていたはずの葉はすっかりしんなりと力なく垂れ下がり、

まるで私の正月気分の終わりのように期限切れを告げている。

一方で、ビニールに包まれた主役の餅の方は、瑞々しさを保ったまま出番を

待ち構えているようだった。



さて、この餅をどうしたものか。

年末に張り切って買い込んだ切り餅も、まだ戸棚にたっぷり残っている。

正直に言えば、三が日からこっち、餅という餅を食らい尽くしたせいで、

胃袋は少々お疲れ気味だ。処分したい気持ちはやまやまなのだが、

餅のメニューを想像するだけで、どこか食欲が足踏みをしてしまう。

鏡開きといえば、一般的にはどんな料理にするのが正解なのだろう。

雑煮に、餅入りぜんざい。あるいは、力うどんや安倍川餅だろうか。

想像を巡らせるものの、私は今、おひとりさまだ。

この大小二つの餅を一度に平らげるとなれば、なかなかの重労働になる。

甘いものよりは醤油の香ばしさを好む質で、きな粉餅よりも海苔巻きの方が

断然好きなのだが、近頃の海苔の高騰には目を見張るものがある。

おやつ感覚で気軽に巻けるような値段ではなくなってしまった。

「海苔、高いもんなあ……」

独り言が、誰もいない台所に虚しく響く。

海苔を巻いて磯辺焼きにするという贅沢な選択肢は、今の私の財布事情では少しばかり

ハードルが高い。

しなびたゆずの葉を指で軽く突っつく。過ぎてしまった暦と、残された餅。

この二つの塊を、飽きのこない、それでいて財布に優しい一皿に変える魔法があれば

いいのに。

私は少しだけため息をつき、冷蔵庫の中に何か代わりになるものがないか、

重い腰を上げて探し始めた。




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