狭い四畳半の部屋には、いつもインスタントラーメンが鎮座している。
最近では物価高の影響で、かつてのような「一食五十円の安価な救世主」とは
呼べなくなってしまった。それでも、この手軽さは何物にも代えがたい。
私の生活において、袋麺とカップ麺は双璧を成す常備食として君臨し続けている。
ただ、どちらがより優れているかと問われれば、私は迷わず袋麺に軍配を上げる。
カップ麺は完成されすぎているがゆえに、遊び心を受け入れる余白が少ない。
その点、袋麺は自由だ。アレンジ次第で、安アパートの食卓が少しだけ華やかになる。
今、私の手元にあるのは「うまかっちゃん」だ。九州の誇るこの名作を使って、
今日は野菜たっぷりのちゃんぽんを作ってみようと思う。
名付けて、うまかっちゃんぽん。
まずはスーパーで買ってきた、ちゃんぽん用のカット野菜をフライパンに放り込む。
熱した油が弾ける音を聞きながら、手早く野菜を炒めていく。並行して鍋で麺を茹で、
粉末スープを溶かす。
出来上がった熱々のとんこつラーメンの上に、山盛りの炒め野菜をどさりと乗せる。
ただそれだけで、いつものインスタントラーメンが、贅沢な一品へと姿を変えた。
うまかっちゃんぽんの完成だ。
湯気の向こう側に見える四畳半の景色が、少しだけ明るくなったような気がした。
貧乏生活において、もっとも大切なのは「妥協」ではなく「工夫」だ。
単にお腹を満たすだけなら、麺を茹でて付属の粉末を溶かすだけでいい。
だが、それだけでは心が枯れてしまう。限られた予算の中でいかにして「外食の味」に
近づけるか。そこに私のプライドがある。
今回の「うまかっちゃんぽん」にも、実は密かなこだわりを詰め込んでいる。
まず、野菜を炒める際、私はあえて火を強める。
安物のフライパンから煙が上がる寸前まで熱し、野菜を一気に投入する。
こうすることで、店で食べるちゃんぽん特有の「香ばしさ」を再現するのだ。
焦げ目のついたキャベツこそが、貧乏料理を御馳走へと昇格させるスパイスになる。
さらに、袋野菜だけではない。冷蔵庫の隅で出番を待っていた竹輪の切れ端も投入した。
魚介の練り物は、とんこつスープに深みを与えてくれる。
これがあるかないかで、スープの説得力がまるで違う。
そして仕上げの一工夫。本来ならお湯で溶かすだけのスープだが、私は炒めた野菜の
フライパンに直接、規定量より少し少なめのお湯と粉末スープを注ぐ。
野菜の旨味と油をスープに乳化させるためだ。
このひと手間で、さらりとしたインスタントのスープが、とろみのある濃厚なちゃんぽん
スープへと変貌を遂げる。
どんぶりに盛り付けられたそれは、もはや一袋百円足らずのインスタント麺には見えない。
冷え切った部屋で、熱々のスープを一口すする。炒めた野菜の甘みと、とんこつのコクが
喉を通るたび、ささやかな幸福感が全身に広がる。
「これこそが四畳半のフルコースだな」
私は誰に聞かせるでもなく独り言ち、割り箸を割った。高級なレストランには縁がない
けれど、この一杯を自分好みに育てる時間は、何物にも代えがたい贅沢なのだ。
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