狭い四畳半の隅、乱雑に積まれた食料の山をかき分けていて、
私はそいつの存在を思い出した。
パスタだ。
インスタントラーメンや乾麺のうどん、そばといった「貧乏暮らしの三種の神器」に
隠れて、パスタもまた、我が家の貴重な備蓄リストに名を連ねていた。
理由は単純、コストパフォーマンスが圧倒的にいいからだ。
ただ、この貧乏パスタというやつは、いささか面倒なのが玉に瑕である。
麺を茹で上げた後、そのままではいけない。オリーブオイルを回しかけて丁寧にほぐす。
このひと手間で喉越しが劇的に良くなることを知って以来、私は欠かさず実践しているの
だが、空腹時にはこの数分が妙に長く感じられる。
ソース選びもまた、四畳半の食卓における重要なトピックだ。
店に行けば、棚にはバラエティ豊かな商品がこれでもかと並んでいる。
しかし、私の財布が許す選択肢となると、自ずと種類は限られてくる。
カルボナーラ、ミートソース、そしてナポリタン。
貧乏パスタの代名詞といえばペペロンチーノだが、あれはどうにも味気ない。
結局、数少ない候補の中で王座に君臨するのはミートソースだ。
理由は明快。なんといっても、ひき肉が入っている。
その一点において、ミートソースは他の追随を許さない。
カルボナーラは所詮たまごであり、ナポリタンは突き詰めればケチャップだ。
だが、ミートソースだけには「肉」という確かな希望が含まれている。
湯煎で温めたソースを、茹でたてのパスタに勢いよくぶっかける。
それだけで、私の今日の晩餐は完成する。
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