日が傾き、辺りは徐々に薄暗くなってきた。そろそろ夕食の時間だ。 どこからか漂ってくる晩御飯の香り。今夜はカレーだろうか。そんなことを考えながら、この貧乏四畳半でも食事の準備に取りかかることにした。
台所の吊戸棚の下にある蛍光灯のスイッチを入れる。一拍置いてから明かりが灯ったが、それと同時にジーという低い音が響き始めた。 なんだか、もの悲しくなるような音だ。夕暮れ時の静けさの中に、隣室から流れてくるカレーの香りと、古びた蛍光灯の唸り声が奇妙に交差する。
音は気になるものの、チカチカと点滅したり消えたりする気配はない。内部の劣化もそれほど深刻ではないだろう。もし完全に切れるようなことがあれば、管理会社に連絡して取り替えてもらえばいい。そのあたりは賃貸特有の気楽なところだ。
鍋に水を張り、火を点ける。 沸騰したところで麺を投入した。しばらく湯がくと、硬かった麺が次第に柔らかく解れていく。どんぶりにスープの素を放り込み、茹で上がった麺を滑らせた。仕上げに、かまぼこを二枚と刻み葱を載せ、一味をぱらりと振りかける。
台所の蛍光灯に青白く照らされたうどんを、小さなテーブルへと運ぶ。これで今夜の夕食の完成だ。
立ち上がる蒸気が鼻先をくすぐる。 今夜も寒気が居座って、冷え込みが厳しくなるらしい。しっかり温まって寝なくては。 私はどんぶりを両手で持ち上げ、熱い汁を一口すすった。じわりと温かい液体が体の中に染み渡っていく。
暖房のない部屋は芯まで冷え切っていた。うどんの湯気と飲み込んだ汁のおかげで、お腹のあたりは温まったような気がする。けれど、剥き出しの手足の先は相変わらず冷たいままだった。
食べ終えたどんぶりを台所へ戻し、蛍光灯のスイッチを切る。 先ほどまでのジーという唸り声が止み、一瞬で静寂が訪れた。
私は頭から毛布を被り、暗くなった窓の外をじっと見つめていた。
コメント
コメントを投稿