夕暮れのスーパー、野菜売り場で私は足を止めた。
視線の先にいたのは、これでもかってくらい太くて立派な大根。
値札を見て、思わず二度見した。 98円。 嘘でしょ、このサイズで。
大きいのに98円とは、お買い得だあ!って、その時はホクホク顔でカゴに
放り込んだんだ。
頭の中では、今夜のふろふき大根や、明日のサラダ、余ったところでお味噌汁を作る
自分を想像して、完璧な節約術に酔いしれていた。
でも、現実はそう甘くなかった。 レジを通って袋に詰める段階で、
早くも後悔が忍び寄ってきた。 重い。とにかく重い。 エコバッグから威勢よく突き出した
葉っぱが、歩くたびに私の脇腹を容赦なく攻撃してくる。
家に着く頃には、右腕が心なしか伸びたんじゃないかってくらいパンパンだった。
ようやくキッチンに辿り着いて、まな板の上にそいつを横たえてみた。
あらためて見ると、これ、ちょっとした鈍器だ。 一人暮らしの冷蔵庫を思い浮かべる。
どこをどう整理したって、この巨体が入るスペースなんてどこにもない。
とりあえず半分に切ろうと包丁を入れたけれど、あまりの密度に刃が途中で止まって
しまった。 まな板の上で大根と格闘しながら、私は遠い目になる。
今夜は大根、明日は大根、明後日もおそらく大根。 安さに目がくらんで連れて帰ってきた
この白い塊と、これから一週間は向き合い続けることになりそうだ。
お買い得って、一体なんだっけ。 とりあえず、今は腕の筋肉痛を癒やすために、
こいつを一本使い切る覚悟を決めるしかない。
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