じゃこおろし

立派な大根を数本まるごといただいた。 いやあ、ありがたい。

冬の大根は重みがあって、白くて、見るからに美味しそうだ。

しかし、ここからが「おひとりさま」の踏ん張りどころ。 初日は定番の大根の味噌汁。

 二日目も、温め直した大根の味噌汁。 三日目、さすがに具材を変えようと思ったけれど、

結局そこに鎮座しているのは大根の味噌汁だ。

このままでは、僕の大根祭りが「味噌汁に始まり味噌汁に終わる」という、

なんとも代わり映えのしないループに陥ってしまう。 正直に言おう。

もう、うんざりだ。

 大根のポテンシャルはこんなもんじゃないはずだ。

もっと、こう、別の華やかな手だてがあるはず。

そこで僕は閃いた。 そうだ、すりおろしだ。

おろし蕎麦に、おろしうどん。いっそのこと、山のようなおろしを投入する

「おろし鍋」なんてどうだろう。 これなら大量消費間違いなし。

まさに大根界のラストリゾート。 僕は意気揚々と、おろし金を手にした。

ところが、現実は甘くなかった。 シャリ、シャリ、とリズミカルに動かしているうちは

良かった。 でも、いくら時間をかけても一向に成果が見えてこないのだ。 

すりおろしても、すりおろしても、出てくるのは水分ばかり。肝心の「おろし」の量が

ちっとも増えない。

しかも、これ、めちゃくちゃ体力がいる。 指先まで一緒にすりおろしてしまわないよう、

全神経を集中させながらの反復作業。 これでもか、これでもかと力を込めて腕を動かす

けれど、器に溜まったのはほんのちょっぴり。

「嘘だろ……」

このペースでは、おろし鍋なんて夢のまた夢。 

それどころか、蕎麦やうどんのトッピングにするのだって心もとない。

 絶望的な疲労感と、わずかな大根おろしを前に、僕はしばし立ち尽くした。

さて、どうするか。 

このまま腕の筋肉を犠牲にしてまで、あと数十分すりおろし続けるのか。

……いや、やめた。方針転換だ。 この貴重な少量の成果を最大限に活かす道は、

ただ一つ。

「じゃこおろし、決定」

ちんまりと小皿に盛られたおろしに、じゃこをパラリ。

 これが一番、平和で美味しい解決策に違いない。






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