いか大根

キッチンに漂う、なんとも言えない微妙な空気。

昨日、大根の煮物だけじゃ味気ないよなと思って、重い腰を上げて「豚バラ大根」に

挑んでみたんだ。 ……いや、正直に言おう。 冷蔵庫に豚バラがなかったから、

ケチって豚こま肉で代用した「豚こま大根」だ。

これがもう、我ながら笑っちゃうくらいイマイチ。 肉はパサつくし、味はボヤけてるし。 「これじゃない感」がすごすぎて、箸が全然進まない。 そもそも作り方の根本から

間違えていたのか、それとも肉のランクを下げた罰なのか。

でも、目の前にはまだ大量の大根が鎮座している。 このまま負けっぱなしで終わる

わけにはいかない。 そこで思いついた次なる作戦。

その名も「イカ缶かさまし大作戦」!

生のイカをさばくなんて、今の私にはハードルが高すぎる。 

YouTubeで予習したときは「透明な骨を抜く」とか言ってた気がするけど、無理無理。

 そもそも、ここ数年まともに研いでいない我が家の包丁じゃ、イカの身を切るどころか

包丁様が「もう引退させてくれ」って嘆き悲しむのが目に見えている。

というわけで、文明の利器「いかの缶詰」を投入することにした。 

大根と人参をコトコト煮て、そこへ缶詰をパカッと開けてドボドボ入れる。

 これなら失敗のしようがないはず……だった。

現在、煮込み始めてから30分。 鍋の中を覗き込んで、私は頭を抱えている。

おかしい。 大根が、いつまでたっても真っ白なのだ。 理想はあの、味が染み込んだ

「琥珀色のツヤツヤ大根」なのに。 それなのに、汁の方はイカ缶の汁ですでに

ドス黒くなっている。

「色の白いは七難隠す」なんて言うけれど、煮物に関しては話が別だ。 

焦った私は、とにかく色をつけようと醤油をドボッ。 照りを出そうとみりんを

ドボドボッ。

……あ。

気がつけば、鍋の中はひたひたの汁で溢れそう。 味見をするのがちょっと怖い。 

これ、煮物っていうか「イカ風味の大根スープ」になってないか?

私の大根消費への道は、まだまだ険しそうである。





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