ツナパスタ

狭い。とにかく狭い。四畳半のこの部屋で、俺は今日もコンロ一台を相手に格闘している。

今日の晩飯はペペロンチーノだ。といっても、ただのペペロンチーノじゃ味気ないから、

棚の奥で眠っていたツナ缶を召喚することにした。

まずはフライパンにオリーブオイルを引いて、ニンニクのスライスを弱火でじっくり焼く。

この、部屋中に広がる「俺はいま、自炊をしているぞ」という香りがたまらない。

香りが立ってきたところで、唐辛子の輪切りを投入。

ピリッとした刺激が加わったところで、茹で上がったパスタをどさっと放り込む。

ここまでは完璧だった。ここまでは。

仕上げにツナ缶を汁ごと、景気よく投入した。

オイルとツナの旨味が合体して最強のパスタができるはずだった。

ところがだ。

かき混ぜても、かき混ぜても、ツナがダマになる。

あいつら、そんなに仲間意識が強かったのかというくらい、一箇所に固まって動こうと

しない。麺の一本一本に絡んでほしいのに、フォークでつつくとゴロッとした塊のまま

逃げていく。

もっと力いっぱいかき混ぜればいいのか?それとも、俺の知らない「ツナを散らす儀式」

みたいなものが存在するんだろうか。

四畳半の静寂の中で、俺は固まったツナを見つめながら考える。

……これ、実はパスタを入れる前に、ツナと茹で汁をフライパンでしっかり混ぜて

「ソース」の状態にしておくべきだったんじゃないか?

次に試すときは、もう少しスマートにやってやりたい。



とりあえず今日のところは、この「ツナの塊」を時々かじりながら、ムラのあるパスタを

すすることにする。



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