窓の外でバイクがふかしている音がする。たぶん隣のアパートのあいつだ。
今日もバイトお疲れさん、なんて思う余裕は今の俺にはない。
四畳半のこの部屋は、今日も安定の狭さだ。
万年床を半分畳んで、空いたスペースにちびちゃい座卓を置く。
これが俺のダイニングテーブル兼、作業机兼、現実逃避場所。
今日の晩飯は、ごはんとみそ汁。以上。
「以上」って言うと寂しく聞こえるけど、これが今の俺にとっては最高の贅沢
だったりする。炊飯器の蓋を開けた瞬間に立ち上がる湯気。
これだけで、今日一日の嫌なことが少しだけ蒸発してくれる気がするんだ。
茶碗に山盛りにした白飯。銘柄なんて気にしない。
安売りの米だけど、炊きたてなら全部正解。
それから、アルミの片手鍋で作った即席のみそ汁。
具は、スーパーで半額だったしなびたネギと、いつから冷蔵庫にいたか
分からないわかめ。出汁なんて凝ったことはしない。
顆粒だしをパラパラっと振って、味噌を溶くだけ。
でも、この汁をご飯と一緒に口に運ぶ瞬間が、たまらなくいい。
ずずっと汁をすすって、胃袋に温かいのが落ちていく感覚。
日本人で良かったなんて使い古されたセリフが、このボロアパートの真ん中で
妙にリアルに響く。
おかずがないからこそ、米の甘みがよく分かる。
噛めば噛むほど、なんかこう、生きてるなって感じがしてくる。
世の中には、フォアグラだのトリュフだの、名前もよく分かんないオシャレな
食い物がいっぱいあるんだろうけど。
今の俺には、この湯気と、ちょっと濃いめに作っちゃったみそ汁があれば、
それで十分だ。
最後の一粒まで米をさらって、お椀の底に残ったネギをかき込む。
ふぅ、と一息つくと、お腹の底からじわじわと体温が上がってくる。
さて、腹も膨れたことだし。明日もこの四畳半から這い出して、
なんとかやっていくとするか。
とりあえず、鍋を洗うのは明日の朝の自分に任せることにしよう。
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