外は冷たい雨がしとしと降ってやがる。
こんな日は、四畳半のこのボロアパートに籠もって、何か温かいもんでも
食うに限る。
部屋の隅っこに転がってた、いつ買ったか分からないかぼちゃの切れ端。
皮が少し硬くなってたが、包丁を入れてみりゃあ、まだ中身は鮮やかな
オレンジ色だ。よし、今日はこいつを煮転がしてやろう。
狭いキッチンっていう名のただの通路で、ちっこい鍋に水と醤油、
あとは酒と砂糖を適当にぶち込む。分量なんて計りゃしねえ。
オイラの勘が「これくらいだろ」って言えば、それが正解なんだ。
火にかけてしばらくすると、醤油の香ばしい匂いと、かぼちゃの甘い香りが
部屋いっぱいに広がってくる。
湿気でたわんだ壁紙まで、心なしか嬉しそうに見えるから不思議なもんだ。
コトコト煮える音を聞きながら、ボロ畳の上に座って仕上がりを待つ。
この待ち時間が、貧乏暮らしの中にある数少ない贅沢なひとときだったりする。
さあ、完成だ。
白い皿に盛り付けてみると、湯気がふわっと立ち上がって、かぼちゃの断面が
ツヤツヤと光ってる。さっそく箸で一切れ掴んで、口に放り込んだ。
……熱っ!
ハフハフ言いながら噛みしめると、ホクホクとした食感のあとに、
素朴な甘みがじゅわっと染み出してきた。派手な味じゃない。
けど、この不器用な味が今のオイラにはちょうどいいんだ。
たったこれだけのことで、腹も心も少しだけ膨らんだ気がする。
外の雨音も、さっきよりは優しく聞こえてきた。
さて、残りの半分は明日の朝飯にとっておくかな。
コメント
コメントを投稿