素うどん

 ここらでもう3日、まともな飯を拝んでねえ。

腹と背中がくっつくなんてのは大げさな表現だと思ってたが、実際こうなってみると、

腹の中にブラックホールでも飼ってるような気分だ。

胃袋が自分自身を消化しちまうんじゃないかって、変な汗が出てくる。

万年床の隅っこをひっくり返して、ようやく見つけたのが100円玉ひとつと、

カピカピに乾いたうどんの乾麺一玉分。

これだよ、これ。 

オイラにとっての救世主は、高級ステーキじゃなく、この色気もねえ真っ白な麺なんだ。

四畳半の隅っこにある、化石みたいなガスコンロに火を点ける。

 ボッと小さく頼りない火が灯るだけで、この冷え切った部屋が少しだけマシに

なった気がした。

味付けは醤油と、いつのか分からない出汁の素。 具? そんなもんあるわけねえだろ。

 ネギの一切れも、揚げ玉の一粒もありゃしない。乾燥揚げだけ。

 正真正銘、純度100パーセントの素うどんだ。

湯気と一緒に立ち上がる醤油の香りが、部屋中に広がる。

 この瞬間だけは、このボロアパートが三ツ星レストランに変わるんだ。

どんぶりのままズルズルとすする。 熱い。けど、うまい。 



ただの小麦粉の塊なのに、喉を通るたびに命の灯火がパチパチと燃え上がるのがわかる。

 スカスカだった体に、ようやく「重み」が戻ってきた。

汁まで全部飲み干して、ふぅとため息をつく。

 腹が満たされると、不思議と明日もなんとかなる気がしてくるから、

人間ってのは安いもんだよな。

さて、明日は何を食おう。 いや、まずはどうやって100円稼ぐか考えるのが先か。

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