じゃこおろし

 天井の隅っこにある雨漏りのシミが、どことなく隣町のハゲた助役の顔に

見えてきた。そんな昼下がり。

腹が減った。けど、手元にあるのは昨日の残りの冷や飯と、いつ買ったか

忘れた大根が半分。それから、神棚(という名の段ボール箱)にお供えして

あった、カチカチに干からびたシラスの袋だけだ。

よし、今日は「じゃこおろし」で決まりだな。

さっそく、ガタがきてるおろし金で大根をガリガリやる。

この四畳半に響く「ガリガリ、ガリガリ」っていう音が、なんともわびしくて、

それでいて妙に落ち着くんだ。

水分を適当に切った真っ白な大根おろしを、どんぶりの中の冷や飯の上に

どさっと乗せる。その上に、さっきのシラス――いや、もはや「じゃこ」

と呼ぶにふさわしい硬いやつらをパラパラと。

仕上げは、近所のばあちゃんにもらった出所不明の醤油をひとまわし。



これを、箸で豪快にかき混ぜる。大根のツンとした匂いと、

磯の香りが混ざり合って、狭い部屋いっぱいに広がる。

さっそく一口。

……うまい。

シャリシャリした大根の食感と、噛めば噛むほど味が出るじゃこの渋さ。

冷たい飯が、大根の水分でさらさらと喉を通っていく。

金はない。明日食うもんも決まってない。

でも、この瞬間だけは、オイラは世界の誰よりも贅沢なもんを食ってる気が

するんだ。

……あ。

勢いよく食いすぎて、鼻にツーンときた。  涙目になりながら、

オイラは空になったどんぶりを見つめて、小さくゲップをひとつ。

さて、夕飯までにもうひと眠りするか。腹が膨れれば、夢の中じゃオイラも

長者様になれるからな。


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