フレンチトースト

 昨日の夜、運よく手に入れた食パン。こいつをどうにかしてやろうと、

一晩中ワクワクして眠れなかった。

贅沢に、一個しかない卵を割る。そこに、いつのかわからん粉ミルクを水で

溶いたやつを混ぜて、砂糖をドバッ。本当は牛乳がいいんだろうけど、

四畳半の住人にそんな洒落たもんはない。

その怪しい液体にパンをたっぷり浸して、フライパンへ。

……あ。

ちょっと火が強すぎた。  ボロいコンロの火加減がバカになってるのを

忘れてた。

慌ててひっくり返したときには、もう遅い。

表面は、夜逃げしたあとの真っ暗な路地裏みたいに真っ黒だ。

焦げたフレンチトースト。



皿に盛ってみると、なんだか炭を食うみたいな見た目になっちまった。

甘い香りと、それ以上に鼻をつく「何かを燃やした」ような香ばしすぎる匂い。

ナイフなんてないから、手掴みでガブリといく。

……苦い。  

でも、その後にくる砂糖の甘さと、卵のまろやかさが、焦げの苦味を必死に

追いかけてくる。

この苦味、なんだかオイラの人生そのものみたいだ。  

外側は真っ黒でボロボロだけど、中身はまだ、ちょっとだけ甘い。

ジャリジャリいう焦げを噛み締めながら、オイラは窓の外の青空を眺める。  

焦げたって、食えないわけじゃない。

むしろ、この苦さがあるから、甘さが引き立つんだ……なんて、

格好つけたことを考えてみる。

でもやっぱり、焦げてないほうがうまかったな。

最後の一口を飲み込んで、指についた甘い汁まで綺麗に舐めとる。  

これ一食で、今日一日のエネルギーを使い果たした気分だ。

さて、焦げたフライパンを洗うのが面倒だけど、放置するともっと落ちなく

なるからな。

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