特別な料理

 貧乏四畳半にとって「特別な料理」の定義は、いたってシンプルだ。

それは、店に足を運んで食べるもののこと。

四畳半のこの城で口にするのは、いつだって決まっている。

炊きたてのご飯に味噌汁、そして申し訳程度の漬物。



たまに変化をつけるとしても、インスタントラーメンか冷凍食品。

それが僕の日常であり、それ以外の食べ物はすべて、貧乏四畳半にとっての聖域、

すなわち特別な料理に分類される。

そんな貧乏四畳半が今日、大枚をはたいてしまった。一匹百円もするイワシの甘露煮。

たかが百円、されど百円。この贅沢のせいで、今月の予算は完全に見通しを誤り、

オーバーしてしまった。1食100円のおかずとは、コスパ最悪の部類に属するが

けれど、後悔はしていない。よく考えてみれば、家で食べる魚料理といえばシシャモか、

せいぜいメザシ程度。それ以外の本格的な魚料理なんて、今年に入ってから一度も

口にしていなかったのだ。



買ってきた甘露煮を皿に出す。残念ながら尾頭付きというわけにはいかなかったけれど、

艶やかに煮込まれたその姿は、僕の食卓において圧倒的な存在感を放っている。

この甘露煮の素晴らしいところは、小骨まで残さず食べられる点にある。

カルシウムがたっぷりだ。

これまで自分の栄養バランス、ましてやカルシウムのことなんて微塵も考えて

こなかったから、あまりの久々さに何だか可笑しくなって、独り笑いが止まらなく

なってしまった。

シシャモに比べれば、その身は驚くほど大きくて、確かな食べ応えがある。

甘辛いタレが染みた身を一解し、ご飯と一緒に口に放り込む。

たまらない。これ一匹だけで、ご飯がいくらでも進んでしまう。

炊飯器へ向かい、迷うことなくおかわりをよそった。

百円の投資で得たこの幸福感を、今はただ、無心に噛み締めていたい。

明日も100円の甘露煮でごはんを食べるのが楽しみだ。




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